「富士ニュース」令和5 年4月掲載

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Meiso Jouki

■  以前、奈良のお寺を訪れたとき、とてもびっくりしたことがあります。国宝の仏殿の外壁前に、子どもの書いた書道作品が、ずらりと張り出されていたのです。(何だろう?)と思って近づいてみると、半紙一枚に一文字だけ。でも、その文字を続けて読んでいくと、それはお経になっていました。みなさんにもなじみの深い『般若心経』でした。
 大きさもバラバラ、それぞれ個性豊かな文字でした。中にはとてもたどたどしい筆跡のものもありましたが、どれも一生懸命さが伝わってくる力強い字で、とても驚きました。
 また、別のお寺では、平べったい丸石に、一文字一文字『般若心経』が書かれ、庭先に奉納されている光景も見たことがあります。マジックの字でしたが、これはこれで奉納された方の願いが伝わってきて、心に響きました。
 一般の方が「お経を書く」ということが、ただ字を書くこととは違うという真剣さが伝わって、背筋が伸びる思いでした。

 奈良・薬師寺を訪れたとき、有名な「写経道場」で写経を体験してみました。このお寺は、写経による寄進で次々と伽藍を整備してきた実績と、長い歴史があります。
 受付をすませて道場に入ると、お香が焚かれた室内で、みなさん黙々と用紙に向かっています。平日なのに、かなりの方が参加していました。
 説明書に従って、なぞり書きをしました。最初は、きっちり書いてやろう! とか、はみださないように完璧になぞってやろう、とか、内心、欲を丸出しにして始めたのですが、途中からどんどん写経に集中していくのがわかりました。
 写経には「心がやすらぐ」「集中力、忍耐力がつく」「ストレスが軽減する」「字が上手になる」「心が清浄になり、調ってくる」など、さまざまなメリットがあるといわれますが、いくつかは(なるほど)と実感しました。

 実は、この「写経」を初めとして、お経にはさまざまな関わり方があります。初級から上級まで私なりに並べてみると、
@「身につける」…お経を彫刻した数珠やペンダント、ミニ経本などを持ち歩くだけでもかまわない。
A「家に置く」
B「耳で聴く」(和尚さんの読経を聴く。または家でBGM音楽のように)
C「写経する」
D声に出して「お誦(とな)え」する
E「暗記する」
F(経本を)「寄進する」 
Gお経の内容を「説法する」
…となりましょうか。
 本年から、この中のひとつ、「写経」の場を提供することにしました。
 毎月一度、妙善寺の書院で写経体験ができます。字のうまい下手は関係ありません。静かで、四季折々の自然が楽しめるお寺です。リラックスならぬ「テラックス?」よろしければ、一度、お気軽にご参加ください。
・毎月第二金曜日。八月はお休みです。午前十時〜正午まで(この時間内のご都合のよい時間に来て体験できます)
・手始めに『般若心経』を写経します(丁寧に書いて三十分から一時間程度)
・初心者大歓迎
・使いなれた筆記用具をお持ちください(筆ペン、鉛筆、ボールペンなど自由)
・納経料 千円
・イス席でできます
[お問い合わせ]
妙善寺 0545・34・0729


文・絵 長島宗深

写   経

明窓浄机

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